(私と)トイ・ストーリー4の話【ネタバレ】

"トイ・ストーリー シリーズはおもちゃと子供を通して、
クリエイターと観客、作品と観客の関係性を描いた作品である"

何時、何処で聞いたのか忘れてしまいましたが、私の心に響き、今なお鳴り続けている言葉です。これを基本としてシリーズ全体を振り返りつつ、トイ・ストーリー4をどう観たか、まとめていおきたいと思います。ひたすらに長く、関係性に全振りした感想ですので、キャラクター一人一人の機微など作品の細かい部分は全く拾えておりません。もどかしい思いをされるかもしれませんが最後までお付き合いいただければ幸いです。

トイ・ストーリー/手段と目的

1995年に公開されたシリーズ1作目。ディズニーがリトル・マーメイド(1989)、美女と野獣(1991)、アラジン(1992)、ライオンキング(1994)、ポカホンタス(1995)と大ヒットを連発した、いわゆる「ディズニー・ルネサンス」の真っ只中に製作された本作は、初のフルCG長編アニメーションとして発表されました。

古いカーボーイ人形のウッディが、新参者の宇宙ヒーロー バス・ライトイヤーに"お気に入り"の座を奪われて対立し……という筋書きは、2000年代に凋落したディズニーの状況とも相まって、手書きアニメーションとCGアニメーションの関係を思わせます。しかし、物語は中盤、家の中から外へ飛び出したおもちゃ達は危機に直面し、紆余曲折を経て持ち主 アンディの元へ戻るために協力するわけですね。ここでの協力関係はまさにピクサーの立ち上げに尽力した二人、手書き畑のジョン・ラセターとCG畑のエドウィン・キャットマルのよう。

では、おもちゃ=クリエイターだとしたら、持ち主であるアンディは誰なのか。

それはやはり私達観客でしょう。観客から愛されることこそ作品とクリエイターの目的かつ幸福である、ということは容易に想像できると思います。かくしてアンディへの元へと戻ることが出来た彼らは、仲間たちと共に愛され続けるおもちゃになりました。それと同時に観客の"お気に入り"の作品となったのです。

トイ・ストーリー2/行く末

4年後の1999年に公開されたシリーズ2作目。

トイ・ストーリー2では、実はウッディは歴史的に価値のあるおもちゃであり、アンディの元で一緒に遊ばれてきた仲間たちとは別に、家族とも呼べるような同じシリーズのおもちゃ達がいたことが明かされます。その中でも特に重要なキャラクター ジェシーは、ウッディとアンディの関係とは対照的に、かつての持ち主 エミリーの"お気に入り"でありながら時間と共に忘れ去られてしまったおもちゃ。彼女の願いは家族と共に博物館で飾られていたい=アンディの元へ戻って欲しくないというものでした。

おもちゃと子供/作品と観客の関係性はここでも使われていますね。観客はやがて成長し、作品から離れていってしまうかもしれない。今の手法も何時かは古くなり、見向きもされない時代が来るかもしれない。それでも愛されること目指して作品を作り続けていくのか、ということが主題です。

飽きられる時が来るかもしれない不安を抱えつつも、今の持ち主を楽しませ愛されること。ウッディ=クリエイターの選択は、1作目を愛してくれた観客に寄り添うというものでした。俺がついてるぜ、と。そして、この決断は3へのフックになっているというのもポイントです。


余談ですが、私は1と3に比べて2への思い入れが薄く、最後に見たのが何年前か覚えていない程でした。そんな状態でこの記事を書くにあたり2について書かれたサイトを見て回っている中で、ジェシーのセリフを起こしてある記事があったんですね。
「オモチャは忘れない。エミリーのことも、アンディのことも。でも、子どもたちは忘れちゃう」
胸を締め付けられるような思いでした。必ず、もう一度見ます。

トイ・ストーリー3/継承

さて、シリーズ3作目は2から約10年が経った2010年に公開されました。作中でも同じだけの時が流れ、アンディも既に17歳。大学の寮への引っ越し準備というところから物語が始まります。2で提示されたおもちゃ達の(作品としての)進退問題がテーマになっています。

当初は、例え遊ばれないとしても、"お気に入り"であるウッディがアンディを見守り、バズを含む他のおもちゃ達は屋根裏部屋で次のチャンスを待つ(具体的にはアンディの子供が遊んでくれるだろうという淡い期待)という予定でした。この時点でとても切ない。これはこの作品のスタンスというよりも、3が公開されたときにシリーズが置かれていた状況そのものでした。シリーズが次の日の目を見るのは観客の子供たちに見てもらう時だろうという覚悟をしていたということに他なりません。

しかし、トイ・ストーリー3はかつて1と2を"お気に入り"としていた観客に向けて語られます。手違いからサニーサイド保育園へ連れていかれてしまった後も、ウッディの最優先事項はアンディの元へ戻ることでした。再び観客に愛される存在として、例え屋根裏部屋に追いやられようとも作品の役割、クリエイターの責任を全うする。作品の終盤まで彼らは常に私達の元へと帰ろうとしていたのです。

そして、物語のラスト、あのラスト。アンディは残されたメモに従い、近所の女の子 ボニーにおもちゃを譲るのです。そのメモを残したのはウッディで、そして自らもボニーの家行きの段ボールに潜み譲られることを選択するというあの流れ!


時が経てば子供はおもちゃで遊ばなくなる。これは宿命とも言えるでしょう。その時が来たときに、おもちゃ達が、クリエイター達が選択する未来は、屋根裏部屋で必要とされる次の時を待つのではなく、仲間と協力して必要とされる次の場所へと飛び込むことでした。作品そのものが、私たちに別れを告げた瞬間でした。次の子供たちが、次の観客が待っていると言い残して。

完璧な結末……誰もがそう思ったハズです。

トイ・ストーリー4/本当の別れ

あれから約10年。ネタバレ入ります、映画を見ていること前提で。ここまでも過去作のネタバレでしたけど。


時系列的には恐らく3の少し後。今回は2から3の10年とは逆に、時が止まっていたかのよう。

しかし冒頭、あれだけ感動的な別れを経て、ボニーのおもちゃになったはずのウッディの定位置はクローゼットの中でした。ここで既に拒否反応が出た人も少なくなかったようですが、私個人としては既にウッディはアンディの(私の)おもちゃではないし、トイ・ストーリー4は私のための作品じゃないというスタンスでしたので全然平気。あんなに大事にしてって言ったのに、ボニー……まぁ小さい子供、ましてや女の子に保安官の人形だとそうなるのも仕方がないよね、と。

そして、ボニーが先割れスプーンのゴミから作ったフォーキーという新たな"お気に入り"。ゴミとしてのアイデンティティを失っていないフォーキーは幾度となくボニーの元から去ろうとし、遂に脱走に成功してしまいます。連れ戻しにいったウッディは、改めてボニーの"お気に入り"とはどういうことなのか言って聞かせようとするのですが……ふとしたタイミングで、彼が今も変わらずアンディのことを想っているということが明らかになります。


もう、ここでダメでしたね、完全に不意打ちでした。ウッディは今でもアンディを想っていた、つまりはトイ・ストーリー4は今までと変わらず、かつて1~3を"お気に入り"としていた観客のための映画だったということですから。3のラストを見て次の世代に受け渡したつもりでいましたが、ダメでした。私、やっぱりトイ・ストーリーが大好きだったんです。もうこの辺からずーっと泣いてましたね。


そうなると気になってくるのは物語の落としどころ。手渡したつもりでいたカウボーイ人形が急に手元に戻ってきてしまったのです。私とトイ・ストーリーの最高の決着を今更掘り起こして、どうしてくれるんだと。


しかし、トイ・ストーリー4に用意された結末は、大変美しいものでした。
ウッディがボーとボニーの間で揺れているとき、バズがかけた言葉が全てを解決します。

彼女は大丈夫だ…、ボニーは大丈夫だ。
She'll be OK ... ,  Bonnie will be OK.

改めて冒頭の言葉を繰り返します。

"トイ・ストーリー シリーズはおもちゃと子供を通して、
クリエイターと観客、作品と観客の関係性を描いた作品である"

バズがかけた言葉は、そのまま私達にかかってくる言葉です。ウッディが、クリエイターが(※)、作品が我々観客の手から離れていく。でも、大丈夫。ボニーは、観客は大丈夫。私は大丈夫。また、ボニーがおもちゃのことを忘れてしまうように、私達が作品から離れていくことに対しても、彼らは許しを与えてくれたのです。大丈夫だと。

※ラセター、キャットマルの相次ぐ退任劇の件

3のラストでは、ウッディはアンディの手元を離れるべく勝手に行動し、ある意味一方的に別れを告げた形とも言えます。4は大好きだったトイ・ストーリー シリーズに、改めてお別れの機会を与えてくれました。

正直なところ、テーマソングが聞こえてこない、俺がついてるぜと言ってもらえないエンドロールにひたすら涙が止まりませんでした。……でも、大丈夫。

ピクサーの物語として

先ほど書いた通り、昨年にはピクサーを立ち上げた2人、ジョン・ラセターとエドウィン・キャットマルが相次いで退社しました。ラセターが監督から降りて後進に任せたカーズ3の物語が現実をなぞったものだったように、今回のトイ・ストーリー4もまた、現実を反映したものとなりました。ここでもバズの言葉がきいてきます。例えあなた達がいなくなったとしても、ピクサーは大丈夫。そんなメッセージも込められているように思えてなりません。

私とトイ・ストーリー/あなたとトイ・ストーリー

思えば私はトイ・ストーリーと共に子供から大人へと成長してきました。アンディと同じように年齢を重ね、大人になった私は徐々にトイ・ストーリーのことを忘れかけていたのだと思います。他のおもちゃに目を奪われ、クローゼットの片隅へと追いやっていたのかもしれません。

今回の作品はお別れであったのと同時に、古い作品になりかけていたトイ・ストーリーを、おもちゃ箱の底からもういちど一番上へと引き上げてくれた、愛を再確認することが出来た、そんな作品となりました。


あなたとトイ・ストーリーの関係は4を経てどうなりましたか?



最後に。

言葉では言い表せないほど美しい結末を、そして改めて観客への愛を示してくれたトイ・ストーリーのスタッフへ敬意をこめて。

あばよ、相棒……

コメント

  1. The casino with roulette machines | Vannienailor4166 Blog
    Casino roulette game is one of the most popular casino jancasino games in 출장마사지 Malaysia. It offers 토토 the latest games with the best odds, with big payouts and https://vannienailor4166blog.blogspot.com/ easy 토토 사이트 모음

    返信削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

エマノンシリーズの話

RDR2プレイヤーに贈るTDLの見どころ

シュガーラッシュ:オンラインの話(ディズニープリンセスの話)