エマノンシリーズの話

ここ何年かチェックし続けている作家さんが3人います。森見登美彦、万城目学、梶尾真治。前者2人はまたの機会においておくとして、今回は梶尾真治のエマノンシリーズの話をします。

エマノンはシリーズの主人公の名前で、彼女は基本的に少女の姿で登場します。長い黒髪に白い粗編みのセーター、ジーンズにナップザック。そばかすと大きな瞳、すらりと伸びた手足、彫りの深い異国的な顔立ち。そして彼女は、"代々記憶を引きつぐ"という業を背負っている、という設定。地球上に生命が発生してからの30億年分の記憶を、彼女は持っているということになります。

ストーリーとしては、エマノンが旅を続ける中での人との出合いと別れが基本。彼女は他人と長い時を共にしません。30億年分の記憶を持つ彼女にとって、数時間も数十年もたいして違いはない、らしいです。エマノンに触れた人々が、別れと共にどのように変化するかはシリーズの醍醐味の1つ。その描写も情緒的な雰囲気で、泣かせにくるとかそういう感じではありませんが、心に残る読後感がまた良し。

個人的にはエマノンシリーズの魅力は、エマノン自身の魅力と言っても良いと思っています。エマノンは行く先々で超常現象に巻き込まれることになります(あるいは自分から突っ込んでいく)。その中にはSFとしては古典的~斬新なアイディアまでたくさんありますが、それらがエマノン単体の設定とキャラクターを上回ることはありません。登場人物皆がエマノンのことを好きになってしまうように、読者もまたエマノンに惹かれていくハズ。


シリーズは1983年から続いており、古参のSFファンには高い人気がある……らしいです。しばらく埋もれていた時期もありましたが、挿絵を担当する鶴田謙二によるコミカライズで人気が再燃し(Googleの検索結果ではコミカライズ版が上位に来るレベル)、過去の文庫も復刊して現在も継続中。とは言っても基本的に短編モノであるので、シリーズの歴史や量におびえる必要はないと言えます。

現在最も手に入れやすい徳間文庫版・徳間書店版の既刊は6巻ですが、通し番号などが無く発刊順が少々分かりづらい。おもいで、さすらい、まろうど、ゆきずり、うたかた、たゆたいの順が正規ルート。先日読み終えた最新刊のたゆたいエマノンでは、30年以上前のおもいでエマノンに収録された「あしびきデイドリーム」に登場するヒカリという人物がキーパーソンになっていることに、かなりビックリしました。とりあえずは順番に読むのがオススメ。


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