スパイダーマン:スパイダーバースの話

現在公開されている映画 スパイダーマン:スパイダーバースがめちゃくちゃ良かったというお話。

マーベルコミックスの多次元宇宙設定(一般に言うパラレルワールド)を活かして、作品の枠を超えて多くのスパイダーマンが集結して巨悪に立ち向かうコミック スパイダーバースシリーズを下地にした長編アニメ。アカデミー賞長編アニメーション部門を始め多くの映画賞を総ナメ、早くも今年ベストに推す声も多く今ノリに乗っている映画ですね。


主人公はブルックリンに住む黒人の高校生 マイルズ・モラレス。コミック アルティメット・スパイダーマン シリーズの2代目主人公という位置づけで、映画は彼が先代スパイダーマンの遺志を受け継ぎヒーローになるまでを描いています。悩みや葛藤を抱く従来のスパイダーマンを踏襲しながらも、他次元の先輩スパイダーマン達の元で薫陶を受けるという展開がポップで楽しく、今までに無い全く新しいスパイダーマン映画になっています。

まずはコミック表現を映像に落とし込んだことで話題になっている演出的な面。漫画の記号的な表現を取り入れたことをはじめ、各キャラクターごとに作画のタッチが違っていたり、全編で印刷のドットや版ズレやが再現されているなどかなり手間が掛かっていることが分かります。「コミックの質感を映画で表現するんだ」という情熱が伝わるようなクオリティで絶賛されるのも納得のデキ。
加えてアクションの作りがとても気持ち良く、もともとスパイダーマンは派手で見栄えのするアクションシーンを作り易そうではありますが、コミック/アニメ特有の色彩感がカッコ良さに拍車を掛けます。特に最後のサイケデリックなバトルシーンはアニメ映画でしか成しえない表現でサイコーにクールなので必見です。


ストーリー的なトコロでは、6人のスパイダーマン全員が活躍しながらも破綻の無い脚本を構成したバランス感覚がお見事。「1人のスパイダーマンの誕生譚・成長譚」と「沢山のスパイダーマンが登場するお祭り映画」がちゃんと両立されています。6人もの個性的なスパイダーマン達がおしゃべりするだけでも十分面白いのですが、単にクロスオーバー作品として引っ張ってきた以上の意味を持っているということです。それは主人公 モラレスの成長面のこともありますが、映画全体で発するメッセージにもノッてくるというのがアツいですね。

主人公 モラレスがスパイダーマンとしてある事で凹んでいるときに、先輩スパイダーマンたちが"分かるぞ"と慰めるあのシーン。スパイダーマンにしか理解できない悩みも、同じスパイダーマンだからこそ理解できる。孤独が半ば運命付けられたスーパーヒーローに仲間と理解者がいるということに、彼等6人全員がお互いに救われるような思いだったでしょう。そして、そのメッセージは誰もがヒーローになれるというスパイダーマンの文脈から考えると凄くエモい。

アフリカ系の少年も、中年の腹が出たオッサンも、女性も、白黒のオジサマも、子供とロボも、豚も、あなたも、誰もがヒーローになれる。そして1人じゃない。ラストシーンもなかなかニクイ演出でした。

というワケで、スパイダーマン:スパイダーバース最高です。正直、すべての原作付き映画がこのクオリティで作られていたら誰もが幸せだと思った程。私は吹き替えで見ましたが、テンポが早いシーンが多いので字幕は苦しいかもしれません。そうそう、吹き替えのクオリティも絶賛されているらしく、本職の声優さんで固めたのは正解だったと思います。

余談ですけど個人的にはDream Big, Princess.キャンペーンのような力強さを感じましたよ。
Be Brave, Hero.的な。
※Dream Big, Princess.についてはシュガーラッシュ:オンラインの話参照のこと

コメント

このブログの人気の投稿

エマノンシリーズの話

RDR2プレイヤーに贈るTDLの見どころ

シュガーラッシュ:オンラインの話(ディズニープリンセスの話)