グラスホッパーとマリアビートルの話

すべてがFになるを読んだせいか頭がどうも小説モードになっているようで、伊坂幸太郎の2作を一気に読みました。例にもれずKindleセールで買って4年ほど積んでいたものになります。何故そんなに放っておいたのかと責められるかもしれませんが、私としてはむしろ4年前に買った本をちゃんと読んでいることを誉めて欲しいと思います。

まぁ結論から言えば、読みやすいケドあまり好きではない作品でした。


多数の殺し屋が登場する群像劇であり、殺し屋シリーズと呼ばれる2作品。昨年にはめでたく3作目が登場するなど、伊坂幸太郎の作品群の中でも人気のシリーズのようです。私は続編の方から読んでしまいましたが、登場人物が多少被っているというだけでストーリー的な繋がりはそれほど無い模様。


初めての伊坂作品だったので色々とレビューを漁ってみたのですが、伊坂ファンの中でも賛否の分かれる作品達のようですね。伊坂作品オススメランキングみたいな記事を読んでも上の方にいたり、下の方にいたり。ただ、低評価のレビューに散見される「リアリティに乏しい」という批判はナンセンスだと思います。作品のリアリティのラインは作家が自由に決めて良いものですし。

2作品とも複数の視点から1つの事件、シチュエーションを描くという点においては上手く構成されていて、物語後半でそれぞれが交錯する点は読んでいて確かに爽快感がありました。が、"交錯"と書いたように"収束"するわけではなく、あくまでそれぞれの結末を描いていて、しかも殺し屋という性質上その結末が"死"であることが多く、カタルシスを得にくい構造というのがイマイチかなと思います。その辺りはマリアビートルの方が意識されていたのかなとは思いますが、いかんせん……。別にハッピーエンドにこだわるわけではありませんが、物語を通して登場人物には何らかの("死"以外の)変化が欲しいところです。

加えて、キャラクター各々目的が違うため当然思い描く結末も違い、事件が至るべき結末(解決)が明示されないまま話が進んでいくというのも、最終的に示された結末をすんなりと受け入れづらい構成だったかなと思います。事件に登場人物(と読者)が振り回されてドタバタしているところで「ここが終点です」と急に幕を引かれる、そんな感覚。ある意味現実的かとは思いますが、これも微妙な読後感に繋がっているように思います。キャラクターが物語を主導にするにしても、もっとそれぞれの背景を深く書いてもらったほうが感情移入もしやすかったでしょうし……殺し屋に感情移入できるかというのはまた別問題ですが。


という感じで私としてはあまり高く評価できない感じだったのですが、伊坂幸太郎の他の作品はどうなんでしょう。あらすじを読んでいるとアヒルと鴨のコインロッカー、ラッシュライフ辺りは面白そうな感じがしますが、果たして。まだ頭の小説モードは続いているので、時間があれば読みたいと思います。


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