毒見師イレーナの話
そういえば、遂にゼルダの伝説BOTWをクリアしました。1月2週目あたりから始め、総プレイ時間は100時間超!長い時間を費やしましたがそれに見合った満足感もありました。ちなみに、ネットで見かける平均的なプレイ時間よりは多少多めですかね。2週目をプレイするような猛者もいるようですが、流石にそんな元気と時間はないです。DLCも購入するつもりでしたが、流石にちょっと時間をあけてからにしようと思います。
19歳の死刑囚 イレーナが、死刑直前に「絞首台へ進むか、一生辞めることの出来ない毒見役として生きていくか」を迫られるという話です。死刑を受け入れてしまってはそこでお話が終わってしまうので――彼女としてはそんな軽薄な理由では決してありませんが(笑)、彼女は"国の最高司令官の毒見役"という立場で生きていく決断をします。死と隣り合わせの日々を懸命に生き抜く彼女に、忍び寄る魔の手が……というストーリー。
まず、"毒見役"にならざるを得ないという主人公の置かれたシチュエーションが良いですよね。スケールの大きな話の中で主人公を中心に置こうとするとどうしても特別な素質や出自を求められがちですが(生き残った男の子――とかね)、そういったものと無縁でも自然な流れで中心に近しいポジションに置ける"毒見役"という職業。これはアイディアの勝利だと思います。ちなみに実際の歴史の中でも、奴隷や死刑囚にその役があてられることが多かったようです。
そして、死と隣り合わせの日々を生きていくことになった主人公のイレーナですが、どんな逆境にも諦めずに立ち向かっていく強いヒロイン――というワケではありません。持ち前の冷静さと意志の強さで様々な問題を乗り越えていきますが、その一方で不利な状況に陥るとすぐ弱気になったりする、19歳の少女らしい強いとも弱いとも言い切れないキャラクターで、それがまたこの物語の魅力です。著者も彼女の心情と成長についてはとても丁寧に描写しているように思えます。その一方で、周りを彩る人物は行動で示すのみで自分を語らないキャラクターが多く、イレーナが"毒見役"として周囲に抱く不信感や裏切られた時の失望感、他人の内面に触れた際の驚きや温かさが、読者が持つイメージとシンクロするようになっているのも上手い書き方だと思いました。
ファンタジー小説としては驚くほど魔法が出てくるシーンは少ないです。魔術が禁忌とされ、魔術師が駆逐されつつある中世ヨーロッパ風の国を舞台にしているということもあり、かなりリアル寄りのバランスになっています。まぁ一国の興亡を描いた大河ドラマとしては権力者の描写が薄っぺらいですが、これはあくまでイレーナの活躍を描くファンタジー、幻想的でいかにも異世界といったものが読みたければ違う作品を読んだ方が賢明です。続刊では分かりませんがね。
続刊、と書いたように、この作品は2005年に書かれた3部作の1作目です。翻訳版が出たのが2015年。最近また新たな3部作が発表されたり、NHKでラジオドラマ化されたり、と実は俄かに盛り上がっている作品のようです(確かその辺に絡めたセールだったハズです)。
えー、ちなみに私は続刊にはそれほど惹かれませんでした。翻訳ものってどうしても表現に限界があるように思います……断っておきますが翻訳自体は素晴らしく、本当に洋書原作なの?というレベルで読みやすかったんですよ。しかし読みやすいということは文章のクセが少ないということで、文章にクセが少ないのであればお話が尖っていないと刺さりづらい。アイディアは秀逸でも作者にしか書けない世界が見えなかった、というか。また、どこから目線で言っているのか分かりませんが。メディアミックスや何か別の機会があれば、続きを読んでみようと思うかもしれません。
で、空いた時間でKindleセールで買っていたファンタジー小説「毒見師イレーナ」を読みました。
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書影はなんだかラノベ風ですが、中身は割と硬派なファンタジー |
19歳の死刑囚 イレーナが、死刑直前に「絞首台へ進むか、一生辞めることの出来ない毒見役として生きていくか」を迫られるという話です。死刑を受け入れてしまってはそこでお話が終わってしまうので――彼女としてはそんな軽薄な理由では決してありませんが(笑)、彼女は"国の最高司令官の毒見役"という立場で生きていく決断をします。死と隣り合わせの日々を懸命に生き抜く彼女に、忍び寄る魔の手が……というストーリー。
まず、"毒見役"にならざるを得ないという主人公の置かれたシチュエーションが良いですよね。スケールの大きな話の中で主人公を中心に置こうとするとどうしても特別な素質や出自を求められがちですが(生き残った男の子――とかね)、そういったものと無縁でも自然な流れで中心に近しいポジションに置ける"毒見役"という職業。これはアイディアの勝利だと思います。ちなみに実際の歴史の中でも、奴隷や死刑囚にその役があてられることが多かったようです。
そして、死と隣り合わせの日々を生きていくことになった主人公のイレーナですが、どんな逆境にも諦めずに立ち向かっていく強いヒロイン――というワケではありません。持ち前の冷静さと意志の強さで様々な問題を乗り越えていきますが、その一方で不利な状況に陥るとすぐ弱気になったりする、19歳の少女らしい強いとも弱いとも言い切れないキャラクターで、それがまたこの物語の魅力です。著者も彼女の心情と成長についてはとても丁寧に描写しているように思えます。その一方で、周りを彩る人物は行動で示すのみで自分を語らないキャラクターが多く、イレーナが"毒見役"として周囲に抱く不信感や裏切られた時の失望感、他人の内面に触れた際の驚きや温かさが、読者が持つイメージとシンクロするようになっているのも上手い書き方だと思いました。
ファンタジー小説としては驚くほど魔法が出てくるシーンは少ないです。魔術が禁忌とされ、魔術師が駆逐されつつある中世ヨーロッパ風の国を舞台にしているということもあり、かなりリアル寄りのバランスになっています。まぁ一国の興亡を描いた大河ドラマとしては権力者の描写が薄っぺらいですが、これはあくまでイレーナの活躍を描くファンタジー、幻想的でいかにも異世界といったものが読みたければ違う作品を読んだ方が賢明です。続刊では分かりませんがね。
続刊、と書いたように、この作品は2005年に書かれた3部作の1作目です。翻訳版が出たのが2015年。最近また新たな3部作が発表されたり、NHKでラジオドラマ化されたり、と実は俄かに盛り上がっている作品のようです(確かその辺に絡めたセールだったハズです)。
えー、ちなみに私は続刊にはそれほど惹かれませんでした。翻訳ものってどうしても表現に限界があるように思います……断っておきますが翻訳自体は素晴らしく、本当に洋書原作なの?というレベルで読みやすかったんですよ。しかし読みやすいということは文章のクセが少ないということで、文章にクセが少ないのであればお話が尖っていないと刺さりづらい。アイディアは秀逸でも作者にしか書けない世界が見えなかった、というか。また、どこから目線で言っているのか分かりませんが。メディアミックスや何か別の機会があれば、続きを読んでみようと思うかもしれません。
マリア・V スナイダー ハーパーコリンズ・ ジャパン 2015-07-18
死刑囚となった少女イレーナ。ついに絞首台へと送られる日を迎えるも、そこで思わぬ選択肢を与えられる――今すぐ絞首刑か、それとも、毒見役になるか。だが毒見役を選んだイレーナを待ち受けていたのは、逃走防止の猛毒と毎日与えられる解毒剤。わずかな生きる希望に賭け壮絶な日々に立ち向かうが……。
死刑囚となった少女イレーナ。ついに絞首台へと送られる日を迎えるも、そこで思わぬ選択肢を与えられる――今すぐ絞首刑か、それとも、毒見役になるか。だが毒見役を選んだイレーナを待ち受けていたのは、逃走防止の猛毒と毎日与えられる解毒剤。わずかな生きる希望に賭け壮絶な日々に立ち向かうが……。
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