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4月, 2018の投稿を表示しています

ウエストワールドの話

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ウエストワールドのシーズン1を見ました。西部劇かつSFというなかなか攻めた作品ですが、大変面白かったです。 個人的に西部劇には牧歌的で楽しげなイメージがあったんですよ。原因はハッキリしてまして、間違いなくバック・トゥ・ザ・フューチャー PARTⅢと、東京ディズニーランドのウエスタンランドのせいです。昔USJでやっていたザ・ワイルド・ワイルド・ワイルド・ウエスト・スタント・ショー(西部劇を題材にしたステージショー、パフォーマーが実際にド派手なスタントを見せてくれる、2005年1月まで)も大好きでした。 えー、ウエストワールドはそんな明るく陽気な雰囲気とは真逆です。 緻密に再現された開拓時代の西部を舞台に、欲望の赴くままに遊ぶことが出来るテーマパーク"ウエストワールド"。変わり者の老人から受け取った地図を基に宝物探しに興じるも良し、殺人鬼として町ゆく人を撃ち殺すも良し、そんな無法者を取りしまる保安官を演じるのも良し。傷害OK、窃盗OK、レイプOK、殺人?もちろんOKのワイルドウエストの世界にゲストをご招待。 来園者同士で殺し合いをしていてはテーマパークとして成り立ちませんので、ゲストの生々しい欲望を一手に引き受けるホストと呼ばれるアンドロイドたちがいます。人間と見分けることが出来ないほど精巧に作られた彼らは、シナリオ通りの日々を過ごし、ゲストに"破壊"されるたびに記憶をリセットされる不憫な存在。ところがあるアップデートを境に彼らのプログラムに不具合が……というお話です。 まず、西部劇とSFを結びつけるテーマパークというアイディアが良いですよね。実は基になった同名の映画があり、そちらは結局暴走するアンドロイドから逃げ惑うパニックホラー的な映画らしいのですが、今回見たドラマ版はしっかりとSFらしい作りになっていて良かったです。SF作品でお馴染みの「どこまでがアンドロイドでどこからが人間か」というテーマももちろん出てきます。 そういった既存のアイディアを借りつつも、登場人物の謎、そして作られた世界に秘められた謎が徐々に明かされていくストーリーの展開が良いです。ただ、ドラマと聞いて想像する以上に脚本が複雑で、正直日本では視聴者置いてきぼりなレベルじゃないかと思います。私も視聴後にいくつかの考察サイトを見て、...

毒見師イレーナの話

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そういえば、遂にゼルダの伝説BOTWをクリアしました。1月2週目あたりから始め、総プレイ時間は100時間超!長い時間を費やしましたがそれに見合った満足感もありました。ちなみに、ネットで見かける平均的なプレイ時間よりは多少多めですかね。2週目をプレイするような猛者もいるようですが、流石にそんな元気と時間はないです。DLCも購入するつもりでしたが、流石にちょっと時間をあけてからにしようと思います。 で、空いた時間でKindleセールで買っていたファンタジー小説「毒見師イレーナ」を読みました。 書影はなんだかラノベ風ですが、中身は割と硬派なファンタジー 19歳の死刑囚 イレーナが、 死刑直前に「絞首台へ進むか、一生辞めることの出来ない毒見役として生きていくか」を迫られるという話 です。死刑を受け入れてしまってはそこでお話が終わってしまうので――彼女としてはそんな軽薄な理由では決してありませんが(笑)、彼女は"国の最高司令官の毒見役"という立場で生きていく決断をします。死と隣り合わせの日々を懸命に生き抜く彼女に、忍び寄る魔の手が……というストーリー。 まず、"毒見役"にならざるを得ないという主人公の置かれたシチュエーションが良いですよね。スケールの大きな話の中で主人公を中心に置こうとするとどうしても特別な素質や出自を求められがちですが(生き残った男の子――とかね)、そういったものと無縁でも自然な流れで中心に近しいポジションに置ける"毒見役"という職業。これはアイディアの勝利だと思います。ちなみに実際の歴史の中でも、奴隷や死刑囚にその役があてられることが多かったようです。 そして、死と隣り合わせの日々を生きていくことになった主人公のイレーナですが、どんな逆境にも諦めずに立ち向かっていく強いヒロイン――というワケではありません。持ち前の冷静さと意志の強さで様々な問題を乗り越えていきますが、その一方で不利な状況に陥るとすぐ弱気になったりする、19歳の少女らしい強いとも弱いとも言い切れないキャラクターで、それがまたこの物語の魅力です。著者も彼女の心情と成長についてはとても丁寧に描写しているように思えます。その一方で、周りを彩る人物は行動で示すのみで自分を語らないキャラクターが多く、イレーナが...

「シン・ゴジラ」、私はこう読む の話

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「シン・ゴジラ」、私はこう読む というタイトルの電子書籍についてのお話。 エヴァンゲリオンシリーズの庵野秀明監督が作り上げた新しいゴジラ像に日本中が熱狂し(そのすぐ後に、君の名は。に潰され)、映画に対する様々な考察・議論・論争を巻き起こしたのは2016年7月。私も映画館へ足を運び、邦画が残念なこのご時世にトンデモナイ映画を作ったもんだ!と何処から目線なのか分からない賞賛を送っておりました。 様々な方面で議論が巻き起こったのは、今まで邦画が避けてきた"社会を描く"という部分で真正面から勝負している、という点が大きく影響したと私は思います。なおかつエンターテイメント作品としても一級品というところが評価された。劇中に「この国はまだやれる」というセリフがありましたが、「邦画もまだやれる」と鑑賞後に思ったものです。 そんなシン・ゴジラを専門家はどう見たのか。 本書は日経ビジネスオンラインで当時連載されていたシン・ゴジラ評を集めたのものです。執筆者は各界のエキスパートがそろっており、一般人にはとても書けないような非常に、非っ常に濃い内容になってます。冒頭から元防衛大臣の石破茂、3.11の時の内閣官房長官 枝野幸男が登場し、作中での自衛隊の在り方や非常時対応について語っており、ここだけでも読む価値アリ!と言っても過言ではありません。 印象に残ったのは、コラムニストの小田嶋隆氏の「シン・ゴジラはおよそ多様な見方を許す映画で、この"簡単に要約できないディティールの豊富さ"こそが、この作品を特別な映画にしているのだと思う。」という部分。"ディティールの豊富さ"が世界/物語を広げるのであって、映画に関わらず創作物はすべからく細部にこだわるべきだと、私は常々思っていたので、スッと入ってきて納得する一文でした。 25万字、文庫になれば900ページ超という物量にまだ最後まで読み切れていないのですが、本書の持つ熱量にあてられて記事にしてしまいました。300円+税でこの内容が読めるというのは、電子書籍のみの発刊とはいえちょっとおかしいレベルですね。シン・ゴジラを見た人は必携。もう一度、映画を見たくなること請け合いです。 「シン・ゴジラ」、私はこう読む[Kindle版] posted wit...

Mini Metroの話

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今度出張で名古屋と大阪行きます。私、普段あまり電車って使わないんですよね。地方在住なので基本は自動車。遠出をする時に、年に数回といったところでしょうか。日常的に利用する人からすれば何を言っているんだコイツという感じでしょうが、私にとっては非日常を感じてワクワクする乗り物だったりします。自分の行動範囲の限界を押し広げて、見知らぬ土地へ連れて行ってくれる乗り物……まぁ名古屋と大阪なのでそんな遠出でもないですし、割と見知った土地なんですケド。 移動時間=自由時間というのも電車の魅力ですよね。せっかくなので電車のゲームをしよう、ということでセールをしていたMini Metroを買ってみました。 Mini Metroはマップに出現する○△□の駅を線路で繋ぎ、乗客を移動させるというシンプルなゲームです。1つの駅に乗客が溜まりすぎるとカウントダウンが始まり、溢れてしまうとゲームオーバー。これがなかなかどうして奥が深い。 自由に線路を引けば良いかというとそういうワケではなく、引ける路線の数、乗客を載せることが出来る車両の数、河川を超えるためのトンネル/橋の数が制限されているので、その辺で上手い具合にバランスを取る必要があります。これらはゲーム内の時間と共に増えていくものの、どれを増やすかは選択式でプレイヤーの手にゆだねられているというのもポイント。路線を増やさず線路を延ばしすぎると、電車が来る間隔が長くなり駅に乗客が溜まってしまうし、電車の本数を増やして解消しようとすれば、川向こうに駅が発生してトンネル不足が生じる等……あっちを立てればこっちが立たず的な状況に陥りやすいのです。 このマップは中洲に□の駅が配置されています、トンネルが必須になるためとてもやっかい 今見ると、オレンジの路線を延ばしすぎですね 幸い線路の引き直しは可能なので、駅が出現する度に効率的なネットワークを模索するのがこのゲームの楽しみ方です。この駅を乗り換えのハブにして、この路線は止まる駅を減らして特急にして、ここは環状線にして内回りと外回り……とか考えていると、現実の交通システムがもの凄いバランスの上で成り立っているということに気づきます。プレイ後には確実に実際の路線図を見る目が変わるハズです。 そしてこのゲーム、UIが美しい。既にゲーム画面を見て頂いたので、...