リメンバー・ミーの話

1か月ほど空いてしまいましたが、私は元気です。公開から1週間が経ちあまり話題にされていないように感じますが、個人的には素晴らしかったので書かせてください。ピクサー最新作「リメンバー・ミー(原題:coco)」の話です。公開日が金曜だったので、仕事帰りに見てきました。

基本的にネタバレは無しで。その代わりと言ってはなんですが、過去のディズニー/ピクサー作品は見ている前提です。


ピクサーらしい作品

ピクサーらしい作品と言われて思い浮かべる要素と言えば何でしょうか?トイ・ストーリー、モンスターズ・インク、ファインディング・ニモ、カーズ……これらの作品の共通点。さぁみんなで考えよう。私個人としては以下の3つですかね。
  • イマジネーション
  • ビジュアル
  • ルール
架空の世界を作り上げる想像力、説得力を与えるビジュアル、物語の推進力となるルール設定。これらがバランスよく(非常に高いレベルで)まとまっているのがピクサー作品の特徴だと思います。
私たちの見ていないところでオモチャたちが自由に動き回る世界観、オモチャらしい質感や動きのクオリティの高さ、人間に見られてはいけない・元居た場所に戻らなくてはならないというルール……他のピクサー作品についても、これら三つの要素は必ず見つけることが出来るはず。

(もっとも、クリエイターを融通しあうようになったここ数年のディズニー作品にも同じようなことが言えるかな……もはやディズニー/ピクサーを区別して語る必要は無いのかも。)

リメンバー・ミーでもその三要素は健在で、予告映像でもその片鱗は感じることが出来るんじゃないでしょうか。主人公が迷い込む"死者の国"というのは特別新しいアイディアではありませんが、メキシコの伝統的なお祭り"死者の日"をモチーフにした明るく陽気な雰囲気と美しいビジュアルがとっても印象的。そして物語を転がすルール……これは詳しく書くとネタバレになってしまうので伏せますが、これもとても秀逸です。いかにもピクサーらしい作品に仕上がっているように思えます。


とは言え、本作はピクサー作品のテンプレートに則っただけの作品ではありません。

その上でディズニーらしい作品

リメンバー・ミーはピクサーの文法だけで出来ている訳ではありません。というのも、今作はかなり近年のディズニーらしい作品となっているように感じました。最近のディズニー作品は常に以下の3要素をテーマとしてきました。
  • コミュニティ
  • ルーツ
  • アイデンティティ
シュガー・ラッシュ、アナと雪の女王、ズートピア、モアナと伝説の海……どれもこれもざっくり見れば、コミュニティの中での異端児あるいはマイノリティとされる主人公が、自身のルーツに向き合い、その末にコミュニティと自身の変化をもってアイデンティティを確立するお話です。排他的な政策を掲げる大統領と、多民族国家であるアメリカで制作される映画ということは多分に影響していることでしょう。

(ベイマックスは若干描き方が異なりますが、現実世界ではマイノリティであろう"オタク達"が主人公という点がポイントかと思います)

今回のリメンバー・ミーも近代ディズニー作品の3テーマを当然かのように使いこなしていますが、これは今までのピクサー作品には無かったことです。もちろん人間ドラマとして普遍的なテーマなので部分的に取り入れている作品もありますが、そもそも擬人化を真骨頂とするピクサーには扱いづらいテーマだったのでしょう。そしてメキシコを舞台として民族のルーツやアイデンティティをテーマにした映画を、今このタイミングで公開するというのは偶然ではないはずです。この辺の社会的背景はズートピアにそっくりですね、狙いすぎているきらいもありますが。

リメンバー・ミーの歌、音楽

そうそう、もう1つ。この映画では"歌・音楽"が重要な要素となっており、これもピクサーらしからぬ、むしろディズニーの領分なのではと感じる人が多いかと思います。私も事前に得た情報では、主人公が人間の少年であること、歌や音楽がふんだんに盛り込まれていることから、てっきりディズニー側の作品かと思っていました。実際には必要なシーンでは歌うという程度で、ミュージカル映画でよくネタにされるような「劇中で人物が突然歌いだす」というシーンはほとんどありませんでした(制作当初はミュージカル映画にすることも検討されたとか)。

これに関してはピクサーがディズニーの手法(ミュージカル映画の手法)を取り入れた、というワケではなく、常に音楽と共にあるメキシコ文化圏を舞台に選んだためというのが実情のようです。結果として物語上でも大きな意味を持つことになり、邦題でもあるRemember meが歌曲賞を取るなどして話題になりましたが、ミュージカルソングであるアナ雪のLet it go.やモアナのHow Far I'll Goとは劇中での役割も使われ方も全く違っていました。こういった異なるアプローチが出来たのは、既存のディズニー作品の型にとらわれない、ピクサーという集団の作品だからではないでしょうか。

ちなみにRemember me、めっちゃステキな曲です。他のノミネート作品を見ずに言うのもなんですが、歌曲賞も納得。もうなんと言うか、使い方がずるい。曲名をそのまま邦題にしていますが、これは担当者に拍手を送りたい!原題もRemember meにしても良かったぐらい!

思えば最近の邦題は酷いものが多い……続編隠し(Cars 3やGotG Vol.2など)なんかはネットで話題にもなりました。個人的にはモアナと伝説の海(原題:Moana)がポスター含めて最悪で、担当者は本編見たのかと問いただしたくなるレベル。当然興行収入などが絡んでくるので理解出来なくはないのですが、曲げてはいけないモノというものがあるでしょう!タイトル含めて作品なんだ!……これはリメンバー・ミーに全く関係無い話でした。



ここまでネタバレなしで書いてきましたが、どういった作品だったのか伝わりましたでしょうか?私の感想を端的に言えば「早くもう一回見たい」です。アナ雪の短編をもう一度見なくてはならないかと思うと……二の足を踏んでしまいますが(笑)。


追記
マンガ大賞の記事で押していたBEASTARSが大賞を受賞しました。やったね。

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